将棋の八大タイトルのうちの半数以上を占め、名実ともに将棋界のトップに立っている弱冠20歳
将棋が趣味でもない私が、プロデビュー前から興味を持ち、今すごく惹きつけられている理由は
二冠達成時に放送されたNHKスペシャル『盤上の物語』に感動し、山中先生との対談ということもあって買った本を読み終え、これを書き始めたのが三冠の頃
ほったらかしていた間に、羽生善治九段の最年少記録を更新する史上初10代での五冠(竜王・王位・叡王・棋聖・王将)を達成し、現在も最年少六冠に向け渡辺明九段(棋王・名人)へ挑戦中!
※この記事がアップされる頃には、羽生九段以来2人目となる六冠を達成しているような予感が???
詳しい説明は割愛しますが、当時の渡辺三冠との対局の中で、トップ棋士たちに衝撃を与えた一手 〖3一銀〗
将棋のセオリーを覆す一手で、対局を見つめていたプロ棋士の多くは「アマチュアが打ちそうな非常に素朴な受けの一手だと感じた」という。
対局中、一手ごとにどちらが優勢か人工知能=AIが評価したグラフでも〖3一銀〗は形勢を悪くする手だと評価されていた。
「他の手が上手くいかないから選んだ手なんだろう」渡辺はこの時、そう考えたという。
しかしこの後、藤井以外の誰も予想していなかったことが起きる。
「負けました」
なんと〖3一銀〗が藤井の王を守り続け、渡辺は一度も王手をかけることができないまま敗れたのだ。
渡辺は対局後、ブログにこう綴っている。「いつ不利になったのか分からないまま、気が付いたら敗勢という将棋でした」
彼のことをもっと知りたいと思った〖3一銀〗、実はネット上でも大きな話題を呼んでいました。
きっかけは「〖3一銀〗は、将棋ソフトに4億手読ませた段階では5番手にも挙がりませんが、6億手読ませると突如、最善手として現れる」という1つのツイートでした。
投稿したのは、今年AIを搭載した将棋ソフトの世界選手権で優勝した杉村達也さん。
杉村さんの開発した将棋ソフト〈水匠2〉は、多くの棋士が研究に使っていて、藤井プロもそのひとりです。
〈水匠2〉は、1秒間に6,000万手という膨大な局面を読み込み、あらゆる選択肢の中から最善とされる手を選び出します。
藤井が〖3一銀〗と指した局面。当初、4億手を読んだという状況の〈水匠2〉が最善手としたのは、多くの棋士も考えた〖3二金〗でした。4億手とは、25手先までの局面を読み込んだ数字です。
藤井の打った〖3一銀〗の価値に〈水匠2〉が気付くのは、さらに2億手となる6億手、すなわち27手先を読んでからのことでした。
杉村さん曰く「最初は1・2番手であっても、それがひっくり返るというのはよくあることなんですけれど、最初から5番手にも挙がらないような正直、取るに足らないような手だったのが、実は最善手だった可能性があるというのは、とてもレアで驚きました。コンピューターも省いてしまうような手を「もしかしたら有力かもしれない」と拾い上げる。そういう能力がおそらく優れているんじゃないかなと思われますね。藤井さんが指す手は、指した瞬間のAIの評価は低いけれど、時間をかけて読ませるとAIの評価が変わってその手を称賛するとか、ある意味AIを少し超えているような部分を感じるところもあったりする。見れば見るほど味わい深いというか、見れば見るほど意味が分かって、すごさとか恐ろしさが分かる一手だったと思います」
もちろん、将棋の戦術や読みの深さに身震いしたわけではありません。(なぜなら、私の棋力は、強い小学生から見てヘッポコレベル!?なので)
高齢者や障がい者福祉の世界においても、AIやロボットの効率的な利用や共存が必要とされている時代に、コンピューターには判断できない人の気持に寄り添えたり、ロボットには判らなかった感情の変化に気付いたりという、人にはまだまだ負けない力があることを、将棋という世界で体現してくれているような気がするのです。
AIやロボットには真似のできない、ご利用者を笑顔にしたり前向きにさせたりする声かけや安心で温かさを感じさせるプロフェッショナルな介護・支援スキルを、人間だからこそ身に付け発揮できると教えてくれているような感覚を覚えるのです。
「数年前には将棋ソフト(AI)との対局が大きな話題になりましたけど、今ではそのAIとの対決の時代を超えて、共存という時代に入ったのかなと思います。今の時代においても、そういう将棋界の盤上の物語というのは不変だと思いますし、その価値を自分自身伝えられればと思っています」と藤井プロはインタビューで答えています。
近年急速に力をつけているAI
トップ棋士をも次々と破り、もはや人間には勝ち目はないと言われている世界で、彼が見せた〖3一銀〗という思考は、他のプロ棋士や解説者、将棋ファンから見ても、人間の可能性を感じさせてくれる衝撃の一手だったのでしょう。
このようなことに触れた時いつも思うのは、私たちの福祉の現場において、それとは真逆の支援員の可能性を否定されてしまうような現象が見られていないかということです。
同じ場所からあまり動かず、支援が必要な時以外は利用者さんとほとんど触れ合おうとしない支援員がいるとしたら、それは近い将来ロボットに代わられる日が来るかもしれません。
まずは、支援員としての基本的なことを見つめ直すとともに、小さな集団の中でだけ通用している考え方や態度をチェンジし、AIやロボットには代わることのできない専門性や優しさを身に付け、利用者さんとの付き合いや様々なサポートに生かすことができるよう、機械との違い=支援者としてのアイデンティティーを確立していくことが必要です。
私たちの仕事や人生にも欠かせない「状況判断をし、選択・決断する」力を身に付けるための思考のトレーニングを小さい時から積み重ね、実践し、磨いてきた彼は、この先一体どんな大人になっていくのだろう。
羽生九段が全冠制覇(当時七冠)を達成したのは25歳の時で、当時よりタイトルが1つ増え、藤井五冠に残されたタイトルは名人、王座、棋王の3つ
とりあえず、前人未到の最年少八冠をこの目で見たい!